「ダイ・ハード」

 コレはその後のアクション映画の流れを変えた歴史的な作品でした。いやぁ、面白かった!
 この後海を舞台にしたダイ・ハードと言えるスティーブン・セガールの出世作「沈黙の戦艦」や空を舞台にした「エグゼクティブ・デシジョン」走るバスを持って来た「スピード」等の亜流ヒット作を産み、果ては007シリーズにまでも影響を及ぼしました。

 そう思うとコレ以降でコレを超える程の面白いアクションは見ていない気までしてきます。何が良いってここには映画が一番面白かった60〜70年代映画の様な言わば "アナログテイスト" が満ちているんですよ。

 今みたくCGで何でもアリなあり得ないアクションでなく、リアルな肉弾アクションとでも言おうか、こっちの方がよっぽどスペクタクル感がありますよねぇ。なにしろ脚本ですよ脚本! 必ずしもCGが悪いと言う訳ではないけれど、CGに頼った作品って脚本が薄っぺらでいい加減なモノが多いですよ。

 本作の練りに練られた伏線に伏線が重なってエスカレートして行く脚本の面白さを見よ! 大人数の犯人グループがたった一人のマクレーン刑事に翻弄されて行くやり取りの面白さ。監禁されている人質の一人がマクレーンの奥さんだといつバレるかと冷や冷やしたり、終盤になるにつれ活きてくる数々の前フリ! まだ全然鼻に付かなかったブルース・ウィリスのヒーロー振り! 最初は本当にカッコ良かったもんね(別に今が悪いという訳ではないけれど)。

 コレは超高層ビルと言う限定された面白い設定を最大限に活かした脚本、それに監督のセンスと役者の魅力が相まった極上の娯楽アクションでした。

 最初はたんなる強盗がブルース・ウィリスの抵抗で段々戦いがエスカレートして、遂には戦争みたいになってく展開のなんと血沸き肉踊ることよ!
 警察が戦車を出動させればホイ来たとばかりに敵は何故か対戦車砲を持っていてぶっ飛ばしたり(笑)本当楽しかったですねぇ。

 マクレーン刑事と無線を通じて唯一の協力者となる黒人刑事との件なんてニヤリとさせて最後のオチまで心憎い。

 ビルジャック犯たちにたったひとりで立ち向かうマクレーン刑事を犯人が「真昼の決闘」をもじって「お前はジョン・ウェインのつもりか」と言う問いに「それはゲーリー・クーパーの間違いだろ」と応えるウィリスにニヤリとしたものです。拍手喝采でした。

 御存じの様にこの作品はシリーズになって第四作まで続く訳ですが、そもそも一介の刑事がたまたまテロ組織の事件現場に居合わせて事件に巻き込まれると言う設定が全くシリーズ的ではないのに、本作が大ヒットしたせいで無理矢理シリーズにしているので続編は実に苦しかった。

 毎年大晦日に酷い目に遭う「世界一不運な男」なんてコピーで売っていましたけど、やっぱし自然に観れるのはこの第一作だけでしたよね。

「2」はまだ楽しめたけど製作者側の苦労が滲んでて本当にギリギリだった。
「3」はもうふやけちゃってダイ・ハードの限定された状況モノの醍醐味が感じられなかった。
「4.0」(って何が4.0なんだか)はもう見せ場をCGに頼ってしまっていました。

 コレが面白かったのは、頭の薄いオッサン(失礼)が本当にギリギリのところで頑張ってヤットコスットコ戦ってくところじゃないですか。裸足でガラスの上を駆けずり回って血だらけになって、それでも必死に頑張ってるから観ている方も身を乗り出して応援したくなるってもんですよ。
 いや〜コレは本当楽しかったですよねぇ。



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